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15 わたしはピエロ

LA QUINDICESIMA PUNTATA  "SONO UNA PAGLIACCIA"

第15話 わたしはピエロ

「ねえ、見てパパ、中国人だよ」

わたしを見て言った通りすがりのイタリア人の子供の発言である。
中国人だったら何なのか。見世物か。
しかも日本人だぞ、あたしゃ。親の教育はどうなってるんだ。

人種差別も慣れたが毎回頭にくる。

イタリアに外国人は珍しくない。何せ観光立国 である。
外国人観光客がいっぱいの国である。
わたしもわたしの勤める会社もそのおかげで食べていける。
ウチの職場の予約係を見て頂きたい。
わたしを含めて4人が4人とも外国人だ。

深夜0時の満員の最終バスに乗れば9割方は外国人である。
歌舞伎町や大久保に外国人が増えたとはいうが比にならない。
しかもここは多民族多国家である。
アラブ系、アジア系、東欧系が多くて、アフリカ系、南米系が続く。

慈悲深いカトリックの大国であるから恵まれない難民たちを無条件で受け入れ過ぎた。
あとからあとからギュウギュウのいかだ に乗って難民たちはやって来る。
老人の介護をしているのはフィリピン人が多い。
東欧や南米の女の子はベビーシッター。
ジプシーは物乞いやスリで稼いでいるし、
道端で海賊盤CDや偽物ルイ・ヴィトンを売っているのはアフリカ人だ。
これだけ外国人に囲まれているのに
やっぱり東洋人だけが見世物扱いなのは何故なのだろう。
イギリス人が「ほら、イギリス人だよ」とか
メキシコ人が「ほら、メキシコ人だよ」と言われることは決してなくて、
「È cinese!(中国人だ! )」なのである。

イタリア人の若者や子供たちの多くは
(これはイタリアに限らないことだと思うが)、幼い頃からたくさんの
日本のTVアニメを見て育ってきた。
日本のメーカーの車やバイクを乗り回し、
電気製品を使いこなしている。
それでも日本がどんな国かは知らなくて、
日本人にする質問は決まって「君たちはスシを毎日食べているの?」。

最近の北野武 が評価されているのは有名な話である。
ヴェネツィア映画祭では『HANA-BI』で大賞に当たる金獅子賞、
『座頭市』で監督賞を受賞した。
しかし、日本に興味を持つ人を抜かせば一般のイタリア人で
「TAKESHI KITANO」の名を知る人はほとんどいない。

日本という国自体に興味があるわけではないから東洋人の区別が付かない。
まあ仕方があるまい。
顔だけではわたしでも判別しかねることはもちろんある、日本人、韓国人、中国人の差異。
しかし文化のごちゃまぜは許せない。
どこで聞いてきたんだか、「日本人は犬を食べる んでしょ?」。
一度は友人と2人で町を歩いていて若い男の子に「SARS!」と言われた。
それまでに同じことを道端で何度も言われたことがあって既にブチ切れていた彼女が
「Non è vero, che ne sai tu!(違うよコノヤロー、てめえの知ったことか)」とどなり返したが、
この程度の憤りは日常茶飯事である。

JACOBO
食べないよ…ね。

しかしこんなことなど、彼らにとってみればかわいいモンであろう。
日経新聞の有名な連載「私の履歴書」で三洋電機の井植敏会長がこう綴っている。
「初めて米国市場に売り込みにきた時は、受け付けで何時間も待たされ、
ホテルでは日本人は泊めない といわれた。」
(日本経済新聞2003年9月17日水曜日朝刊)。
1960年代中盤のことである。
こういった日本人の先駆けがあって今のわたしたちがあるのだ。
これくらいでへこたれてはいけない。
へこたれなかった日本人たちがいるのだから。

残念ながらアジア以外の諸外国に住む日本人が多かれ少なかれ経験していることなのである。
それにしてもヨーロッパ、特にイタリアは顕著だと思う。

「お前は全然イタリアのことを分かっていない」と同僚のファビオによく言われる。
100歩譲ってそうかもしれない。
しかし自分を棚に上げて言えばわたしなどまだマシな方だ。
イタリアを分かろうとイタリアで生活しているのだから。
イタリア人には東洋を理解しようとしない人が多い。
イタリア人はイタリア料理しか食べない
(厳密に言うと「イタリア料理」は存在しない。各地方によって料理が様々だからである。
しかしやはりイタリア料理だ。ベトナム料理ではないしロシア料理でもない)。
「勇気がないんでしょ?」とつっこむと「あーそうだよ」 と開き直っていた。
多くのイタリア人がせいぜい行っても中華料理屋止まりである。保守的なのだ。
外国料理を食べておいしいと思う人も少ないらしい。イタリア料理が世界で一番だ!と。
それはそれで愛国心があって素晴らしいことだが、
わたしは世界の味を柔軟に楽しめる舌と食文化を持って幸せだと思っている。

確かに日本に興味を持ち、情熱のまなざしで見つめてくれる人々がいるのも認めよう。
日本文化や日本語を勉強している人たちや、
日本のマンガ、アニメおたくたちである。
我が国の文化に興味を持って下さるのは大変ありがたい。
例えば今週ポッと『六月の蛇』という塚本晋也監督 の日本映画が
ローマで上映されているのに気付いた。
ローマの映画館66館中の1館である。
この中心地にある映画館というのが何かこだわりを持っているらしく、
『座頭市』のイタリア語字幕日本語バージョンというのをローマで唯一上映していたところだ
(イタリアで一般上映される映画のほとんどが吹き替えである。
『千と千尋の神隠し』も大島渚の『御法度』も吹き替えで観たものだ)。
こんな映画館が一軒でもあるのは本当に嬉しい。
そこでわたしが日本の映画を観られるからではなくて、
その上映を企画しているイタリア人がそこに存在するということがだ。

イタリア人は基本的に大袈裟 だから、
見せかけばかりで実は無知、というケースが多い。
『ルパン三世』を見て育って、入荷したばかりのI-MODEの新機種を持ち、
アライのヘルメットをかぶってホンダのバイクにまたがり、
「コンニチハ」と声を掛けてきたとしても、勘違いしてはいけない。
日本に興味を持っているとは限らないのだ。
もしそいつが「よしもとばななの全作品 を読んだよ」とか
黒澤明の全作品 を観たよ」とか言ったら、
そこで初めて「あれ、本物かな?」と思い始めるべきなのである。

先日、ヴェネツィア大学で日本語を勉強している学生と話す機会があったのだが、
2人とも本当に日本が好きなのだった。
幼い頃から日本の文化の他国のそれとの異質性を感じ取っており、
憧れ、勉強を始めたのだという。
近くに日本人が住んでいたからとか、
そういう外から働きかけられたきっかけのようなものはないのだという。
他のイタリア人と何が違うのだろうか。
「昨日ジャッキー・チェンの映画観た?えっ?観てないの?日本人でしょ?」って言うイタリア人と。

(注)一年ほど前にも、同様のテーマについて筆を起こしている。
   当時感じていたことを、職場の同僚であったクラウディアに助けてもらいながら
   拙いイタリア語で書き、テレビ局に送った。
   ちなみに未だに返事はない。

(2003年12月)

テレビ局に送った手紙(原文のまま)

Sono una studentessa giapponese che abita da un anno e mezzo a Roma.
Vedo sempre la Vostra trasmissione e mi deverto moltissimo.

Ho visto la puntata del 10 giugno, se non mi sbaglio, si diceva che fare uno starnuto è maleducazione in Giappone.
Io ho vissuto per 26 anni in Giappone, ma non ho mai sentito qualcosa del genere, poi ho chiesto agli amici giapponesi, ma tutti dicono di no.
Anticamente fare uno starnuto significava “sfortunato", ma assolutamente non significa “maleducato".

Tanti giovani italiani sono cresciuti vedendo i caltoni animati giapponesi in TV, poi molti usano ogetti elettrici e macchine giapponesi in Italia.
Addirittura hanno fatto il mondiale del calcio in Giappone, ma qui, questo bel paese non è stato mai presentato esattamente.

Per esempio, ho letto un articolo sul giornale “LEGGO" del 17 giugno che parlava di cucina coreana ed invece presentava i cibi giapponesi come Sushi, Yakitori, Sashimi e Tempura ecc...

Io lavoro al centro come commessa.
Un giorno mentre parlavo in giapponese con dei clienti giapponesi, una signora italiana ha detto,
“In questo negozio ci sono cinesi."
Il nostro proprietario l'ha corretta dicendo,
“Questi sono giapponesi."
Allora questa signora diceva,
“Giapponesi e cinesi sono uguali."
ed è andata via senza salutarci.

Quando mi capitano queste cose, mi sento triste, ma purtroppo succedono sempre.
Mica penso che gli italiani e gli arabi siano uguali, no?

Alcuni italiani non studiano cose dei paesi orientali.
Senza studiare, li equivocano e qualche volta li prendono in giro.
Secondo me, chi non studia non ha alcun diritto di parlare e qui mi riferisco non ai lettori ma a chi scrive i giornali ecc...

A tanti giapponesi interessa l'Italia.
Per esempio, fino al periodo di scuola superiore, noi studiamo l'Impero Romano, il Rinascimento e il Patto Tripartito di settembre 1940 ecc...
Secondo certi dati (“Japan Statistical Yearbook 1998 e ENIT 15 ottobre 1998"), in Italia vengono circa 2 milioni turisti giapponesi all'anno, invece purtroppo i turisti italiani in Giappone sono circa solo 30 mila.

Capisco che è difficile viaggiare in Giappone, perché la vita costa molto, per questo davvero mi auguro che Voi lavoriate bene affinché i paesi asiatici siano presentati in modo migliore.

Ultimamente vedo spesso la pubblicità del cioccolatino “DUPLO" di Kinder dove ci sono dei lottatori di Sumo, ma non penso ne trasmetti un'immagine veritiera.

Comunque per presentare bene l'Italia, io vorrei studiare di piùquesto paese.

Distinti Saluti

Mami

テレビ局に送った手紙(日本語訳)

わたしはローマに住んで1年半になる日本人の女の子です。
こちらの番組(注*RAI3の“Alle falde del Kilimangiaro")はいつも楽しく拝見しています。

2002年6月10日の放送で、「日本ではくしゃみをすることが無礼な行為に当たる」
と言っていました。
わたしは26年間日本に住んでいましたが、そんなことは一度も聞いたことがありませんし、
日本の友人たちに尋ねてもやはり知らないと言います。
古くはくしゃみは「不運」を意味したそうですが、決して「無礼な行為」ではありません。

多くのイタリアの若者は、日本のTVアニメを見て育ち、日本の電気製品や車を使っています。
更には日本でサッカーのワールドカップも行われました。
しかしこの美しい我が国が正しく伝えられることはないのです。

6月17日付の「LEGGO」の韓国料理特集では、日本料理であるはずの寿司、焼鳥、刺身、
天ぷらなどが紹介されるという有様でした。

わたしは普段は店員としても働いています(注*2002年6月当時のわたしは家庭用品店店員)。
ある時わたしが日本人のお客さんに日本語で接客していると、やはりお客さんとして来ていた
イタリア人女性がこう言いました。
「まあ、ここには中国人がいるわ」
店のオーナーはわたしたちを指して、
「違います、この子たちは日本人です」
と言ってくれたのですが、その人は
「日本人も中国人も変わんないわよ」
と挨拶もせずに出て行きました。

こんなことが起きるたび、わたしは悲しくなりますが、残念ながらよくあることなのです。
イタリア人もアラブ人も変わんないわよ、とは決して思わないのに…。

東洋の国々のことを勉強しないイタリア人たちがいます。
勉強せずにその国のことを誤解して、時にはバカにしたりするのです。
勉強しない人には発言する権利はないと思います。
これは読者ではなく新聞記者など情報を伝える側の人々に言いたいことなのです。

多くの日本人がイタリアに興味を持っています。
例えば高校3年までに日本ではローマ帝国、ルネサンス、
日独伊三国同盟などについて勉強します。
統計によるとイタリアには年間200万人の日本人観光客が来るそうです。
しかし逆に、日本に来るイタリア人観光客は年間3万人とか。

もちろん物価が高いので日本への旅行が容易でないことは分かります。
しかし、だからこそ、わたしは皆さんにアジアの国々が正しく紹介されるように
報道して頂きたいと願っているのです。

最近Kinder社の「DUPLO」というお菓子の宣伝をTVでよく見かけます。
お相撲さんが題材になっていますが、あまり正しく表現されているようには思えません。

少なくともわたしはイタリアを正しく紹介するために、
イタリアのことを勉強したいと思っているのです。

かしこ

まみ

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